05『毎日グラフ』第39巻16号(通巻1906号)、1986年6月29日号、佃堅輔 選評
- kujakuhanamasakobl
- 2024年3月10日
- 読了時間: 2分
更新日:2024年4月11日

「鳥界(春夢)」1986年
162cm×130cm、油彩
佃堅輔の選評

(選評のテキストデータ)
「美術と生活219――イマージュと絵画――」
金子真子 イマージュと幻影
春のおぼろなる夢は、淡い紫色の霞かかる空のなかに、白と黄との花々の姿や澄んだ時間の物影を従えて現われる。夢は明るい光をひめて闇夜にむかうこともなく、ただおのが世界をもて遊ぶかのように穏に漂う。けれども、たまゆら夢は変りゆく。 花々は孔雀の頭部にメタモルフォーゼしてゆくのだろうか。夢とわかりつつも、夢を追うこの世界は、鳥界であることだけは確かなようだ。
画面右側に、花びんに活けられた百合の花が、実在の対象物として描出される。この対象物が、画家の眼の内なる光感の視野をひらく。画家はおそらく眼を閉じながら、美しい色の百合の花々が、色と光度の変化を伴って変化してゆく様をとらえようとするのだろう。すると定まらぬイメージの形象が、花を支える背景の青緑色の明るい領域から孔雀の羽を現出させてくる。静かな、まどろみの詩情が、いかにも女性らしい細やかな感性によって語られる。
(文中のゴシック体・下線は金子昌子美術館運営委員会による)
【誌面構成上の昌子作品の位置づけ】
『毎日グラフ』で連載されていた〈美術と生活〉第219回に昌子の「鳥界(春夢)」が紹介された。

美術評論家 佃堅輔に見開き2ページが与えられた連載で、この回を佃は「イマージュと絵画」と名づけ、5人の画家を紹介している。
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