08『芸術グラフ』第9巻6号(通巻58号)、1988年11月号、佃 堅輔 選評
- kujakuhanamasakobl
- 2024年3月10日
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更新日:2024年4月11日
〈佃 堅輔の選んだ年間ベスト10〉

「風わたる」 1988年 162cm×130cm
同誌同号の佃 堅輔の評で、絶賛された一枚。

「遊苑」 1988年 162cm×130cm
「競華」「風わたる」とともに、第三期の代表作。第二期と大きく異なるのは、鳥(クジャク)の背景が鶏舎や阿蘇の大自然ではなくなってきた点である。しかし写実から離れるのでもなく、写実と抽象の絶妙な融合の境地に至っている。
佃堅輔の選評。

(選評のテキストデータ)
〈佃堅輔の選んだ年間ベスト10〉
長いドレスを引きずるような孔雀の尾は、体長の4・5倍もあるほどの長さのアンバランスによって、いっそう華美なものを強く印象づけよう。
この作家の描く孔雀のモティーフも、孔雀の華美なものに魅せられて、絵画構成にさまざまなヴァリエーションを付与している。
空や水にも思える澄んだ青の濃淡の色面構成のなかに、雲や白い花のようなものが軽やかに浮遊する。そして右上方から、草原の楕円形が入り込む。さわやかな初夏の季節のこうした背景的イメージは、孔雀の姿を画面に落ちつかせる。この尾の斑点眼状の赤と薄緑とを帯びた部分は、きらびやかに色づいた貝の数珠つなぎの飾り模様が水面から洗われて浮上したような艶やかさを持っている。それを包む羽の細かな交錯は、羽音をたててこの美に群がる名もない小さな虫たちの饗宴のようにもみえよう。
作品は作品は「風わたる」である。さわやかな背景的イメージが、風をわたらせて吹き抜かせるのは、孔雀の誇らしげな上向きの頭部のところ、つまり奥行きにむかう白っぽい、小さな色面である。作家は、孔雀のリアルな描写を、イメージ構成の詩的空間に置くことの楽しさを見いだしている。
(文中のゴシック体・下線は金子昌子美術館運営委員会による)
【誌面構成上の昌子作品の位置づけ】
文字どおり、美術評論家〈佃 堅輔の選んだ年間ベスト10〉に選ばれた作品である。〈年間ベスト10〉と言いながら、選ばれた作家は7名(残りの3点は作品のみ掲載)。

同号には類似の企画として〈佃 堅輔の秋のベストアーティスト〉があるが、これは春・夏・秋・冬の季節ごとに選ばれるもの。また、〈水上杏平の秀作10選〉もあるが、これは「年間」という枠を持たないものである。
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