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マサコブルーの秘密

  • kujakuhanamasakobl
  • 2024年5月20日
  • 読了時間: 3分

更新日:9月27日

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 マサコブルーといわれる深く透明感のある青色は、ラピスラズリという鉱物が原料である。日本では産出しておらず、おもにアフガニスタンなどで採取されている。ラピスラズリの和名は「瑠璃」である。――「瑠璃色」の瑠璃。とても貴重な鉱物で、金・銀・プラチナ・ダイアモンド以上に高価だともいわれる。

 問題は、ここからである。

 ラピスラズリを原料とした青色の顔料に、ウルトラマリンがある。ところが、「ただの絵の具の中の一色」ではない。マサコブルーは、明らかにそれと違っている。ウルトラマリンの絵の具には数種類の色合いの幅があるのだが、とくに青色のものをウルトラマリンブルーという。ウルトラマリンには天然のものと人工顔料とがあるが、フェルメールが天然ウルトラマリンを愛用して絵を描いたことから、ウルトラマリンブルーのことを「フェルメール・ブルー」と呼ぶ人も出てきた。

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フェルメール「真珠の耳飾りの少女」


 そこで、フェルメールの絵の中のブルーと、金子昌子の絵の中のブルーとを比べてみると、フェルメール・ブルー(絵の具としてのウルトラマリンの色)よりも、マサコブルーのほうが鉱物としての(つまり原石としての)ラピスラズリの色に近いようなのだ(実際には同一のカメラ、同一の明るさの室内など条件を揃えた画像どうしでなければ比較できないが)

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金子昌子「花」 1988年 73cm×91cm 油彩

クジャクの頭部から胸部にかけてが「マサコブルー」。


 ラピスラズリは、「深い青色から藍色をもち、黄鉄鉱の粒を含むことが多いので輝度が高く、夜空のような輝きをもつ」といわれるが、マサコブルーはまさにそのような色なのである。

 このことから金子昌子は、絵の具としてのウルトラマリンブルーだけではなく、ラピスラズリそのものを粉砕してウルトラマリンブルーの絵の具に混ぜて使用していた可能性さえある。

 ただし、今ではそれをたしかめるすべがない(科学的な成分分析ができれば別だが)。金子昌子が100号サイズの絵を描くと「絵の具代だけで数十万円かけていた」といわれるが、それはかなり高価な絵の具類を惜しみなく使用していたことによるものと思われる。


なお、「マサコブルー」の応用編に、「マサコグリーン」がある。市販の絵の具の色名でいうと「バライタ・グリーン」に近い。しかし、それとも微妙に異なることから、グリーン系統の絵の具や鉱物を混ぜて色を作った可能性がある。その配合も今では、たしかめるすべがない。

 美術評論家が、昌子の絵のマチエール(絵肌ともいう。輝度を含む質感)まで賞賛していたことを考えると、バライタ・グリーンそのままではない、何らかの工夫が凝らされていたものと考えられる。これ(マチエール)ばかりはデジタルや印刷の画像では伝わらず、現物で鑑賞するしかない。



 
 
 

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